MIDDLE PHASE
◆Middle06◆如奈瑠璃
一方その頃。普段と変わらずスーパーでの買い物をすませた瑠璃は、公園のベンチに腰をかけていた。現れた影に、視線を合わせぬまま短く声をかける。
瑠璃:で?
GM/付渡:「どうやら動きがあったようだな、UGNに。我々も向こうと合流して本格的に天羽君を探さないといけないようだ」
瑠璃:そっか、大変だね。
GM/付渡:「あなたもきてくださいね。あなたが見ていることが重要らしい」
瑠璃:誰にとって?
GM/付渡:「薬王寺支部長にとって。あなたはジョーカーらしい」
瑠璃:な、な、なんだってー! と言いたい気分を抑えて(笑)へぇー。で、今彼女はどうしてるって?
GM/付渡:それについてはさっきのシーンの話がでてきます。「しばらく連絡が取れないだろう。どうなるかわからない」
瑠璃:案外無茶するわね。
GM/付渡:「今後UGN上層部が武蔵蓮沼に対して何かしらしてくるだろう。とりあえず向こうと合流してこれからどうするか話し合わないといけないし」
瑠璃:んー。さっきの、人が溶けた事件についても聞いていいのかしら?
GM:はい。
瑠璃:それについての情報はどこまで?
GM/付渡:「さっぱりだな。目撃したのは桐生白雪ひとり。それ以外に似たようなことがあったという情報もない」
瑠璃:なるほどねぇ。
GM/付渡:「そのボタン電池みたいなものは溶けた奴の身体に組み込まれていたみたいだな。持っているのは桐生白雪本人だ」
瑠璃:まあ仕方ない。それ見にいこ。
GM/付渡:「どうやら向こうは教会にいるみたいだから行くか」
瑠璃:じゃあ白雪に電話かけてみよ。
白雪:あ、瑠璃さん。お久しぶりです。
瑠璃:電池の調べついた?
白雪:いえ、まだです。機械はちょっと……。
瑠璃:ほんとに機械なの?
白雪:見た目はボタン電池みたいなんですけど……。
瑠璃:じゃあ全然調べてもいないんじゃん。
白雪:はい。タイミングが実際つかめませんでした(汗
瑠璃:わかった。じゃあそっち行くから。
GM:そしたらあとの2人もいますね。
シュージ:いるよー。
遥歌:(唐突に)なんかね……(シュージを指差して)かわいい(一同爆笑)
GM:なんやねん。そこ、持ち帰らない!(笑)
瑠璃:取り合いしない!(笑)
白雪:まるごと?
シュージ:な、なんだってー(笑)
白雪:天羽君とシュージ君セットで?
GM:業が深い。
一同:うわー……。
遥歌:ゴージャスー……(ぼそ)
シュージ:ゴージャスっ!?(笑)
GM:じゃあ教会で合流しました。登場してください。
シュージ・遥歌:はーい。
白雪:ではあらためてこれを調べます?
瑠璃:何で調べればいいんですか?
GM:とりあえず<知覚>で見てみて。それ以外に何か使えそうなエフェクトがあるなら申請可。
遥歌:ダメだ、ナマモノ相手にしか通じない。(←ソラリス)<知覚>……無駄と知りつつ振るね(ころりん)
GM:おっ!?
遥歌:回ったよ!? <知覚>のレベル足して、20!!
一同:おお〜。
その横では瑠璃がしれっと35という数値を出しているんですけどね。
GM:それなら十分わかりますね。まず、少なくともボタン電池じゃありません(一同爆笑)詳しくは分からないんだけど、何かのリミッターらしい。何を制御するものかは分からないが、リモートコントロールで動いている。そこまでは分かります。
白雪:解除されたのかされてないのかは?
瑠璃:されちゃったんだよね?
GM:これは使用済みと思っていいでしょう。
遥歌:逆に言うとリミッターを解除されたからぐずぐずと……。
白雪:とろけた。
GM:ま、これがリミッターなんだって分かったから<知識:遺伝子学>とか<知識:医学>とかそのへんで振ってみて。
遥歌:他の人の結果を見てから考えます。《マインドエンハンス》は回数制限があるので。
白雪:1個回った……14。
GM:14あればわかります。これはドグマ・リミッターといいまして、遺伝子レベルで生物をつなぎとめておくためのリミッターです。これを解除してしまうと遺伝子レベルでの崩壊がおこる、という代物。
白雪:あ、それでかー!
GM:こんな小さいものでそれだけのすごいことができるはずもなく、どこかにホストがあるはず。
シュージ:つまりホストから情報を受信して……?
瑠璃:で、こんなのを作れるのはどこだって?
GM:ある程度UGNで実用化されてる代物。そんなに出回っちゃいないけど。
遥歌:実用化っていうのは何の目的で?
GM:そりゃ首輪ですよ。
白雪:新進派ですよね。
GM:人道派がこんなもん使うかい(笑)
白雪:ですから私も見たことはない、聞いたことがあるだけ、と。
GM:ま、そーゆー代物ですから、UGNの一部で使われているのかしらん? FHだともっと使われているのかしらん?
瑠璃:「MADE IN UGN」とか書いてない?
GM:書いてない書いてない(笑)だからこれを使っているところ、で特定するのはかなり難しい。
瑠璃:やっぱ電波追える人が……(笑)
GM/付渡:「そっか、つまり逆にこいつを追えればいいんだよな」
遥歌:そういうことですね。
GM/付渡:「追える奴いないのか?」モルフェウス手を上げて。びし! ……読めない(笑)
白雪:《サイコメトリー》ここで覚えてもいいですか? <交渉>回せないから微妙だけど……。
瑠璃:《練成の掟》で回せるよ。
白雪:はい、覚えます! 《練成の掟》を組み合わせて……ダイスが……3個。えいっ!
一同:…………。
GM:ぷっ。
白雪:……(硬直)
GM:いくつ? ねぇいくつ?(にやにや)
シュージ:(のぞきこんで)えーと、<交渉>のレベルはなし……、だから……。
一同:4!!
白雪:がんばったもんっ! 覚えたんだもんっ!!
GM:目の前に白雪が現れたところから辿れます(笑)
瑠璃:意味ない(笑)
白雪:何も言わずに落ち込んでます。察してください。
シュージ:うーん。どーやったら調べられるかなぁ?
GM/付渡:「そうか、俺の知り合いにいるじゃないか。俺の知り合いでな、《サイコメトリー》しかできない奴がいるんだよ」(一同笑)
白雪:どなたですか?
GM/付渡:「コードネームは“春鮫(スプリング・シャーク)”っていうんだけどな。そいつがたしか使えたはずだ」
遥歌:ああ、僕もその方は知っています。
GM/付渡:「そいつに頼んでみるか」
光明が見えたところで、遥歌の携帯電話が着信メロディを奏でた。通話ボタンを押すと、よく通る声が耳を打った。――霧谷との連絡がとれた。妹の告げる内容に遥歌は頷くと通話を切り替えた。
GM/霧谷:「今回、武蔵蓮沼で起こっていることはご存知ですか?」
遥歌:ある程度は。
GM/霧谷:「現在、薬王寺は監禁されています。すぐに命をとってしまおうということは思っていないようですね。それはさすがに損害が大きすぎると判断しているのかもしれません」
遥歌:なるほど、わかりました。彼女は最後まであなたを信じると言っていたので、フォローをお願いします。
GM/霧谷:「はい。あともうひとつ、これは喜ぶべき状況なんでしょう……。上層部は部隊を派遣して甲月シュージを力ずくで獲得に向かっています。が、向こうは彼の居場所を知りません。天羽央樹の部屋にいる、というところで情報が止まっています」
遥歌:なるほど。
GM/霧谷:「ですから天羽君の部屋はだいぶあらされてしまいましたが……」
シュージ:しゅーん。
遥歌:かなり強硬な手段にでているんですね。
GM/霧谷:「それほどまでに重要なことがあるのかもしれません」
遥歌:まぁ……いつでもUGNはいくつかに分かれて何かやっているみたいですしね。
GM/霧谷:「耳が痛いです、申し訳ありません。それでこれからのことなんですが……」
今後の選択肢は2つ。ひとつは、強硬手段に出るだろう上層部の部隊からUGN武蔵蓮沼支部を防衛すること。防衛さえしてしまえば事が明るみに出て、向こうも動きがとれなくなり、事態はかなり好転する。そう霧谷は予測を述べた。
そしてもうひとつの選択肢は、先にアイギスを研究している施設をつきとめて電撃戦をしかけるというものだ。先に鈴島のやっていることを暴き、央樹を取り返す。彼さえ取り返せばいくらでも理由は立つ。
“リヴァイアサン”の名を持つ男の提案に、遥歌は低くうなった。
遥歌:ただですね。予測なんですけど、おそらくアイギス研究の成功例が天羽君だと思います。少なくともなんらかの実験はされているはずです。
GM/霧谷:「実験はされているでしょう。が、こちらの見方では天羽君自身は無事、代わりに天羽君の複製体を使って実験をしていると考えています」
遥歌:あぁー……。
GM/霧谷:「あなたのほうにも来ませんでしたか? 複製体のデータを回すようにと」
遥歌:来ましたね。それは逆に素直にデータを回したほうがよかったでしょうか。「やりかた分からないからもういいや、本物つかっちゃえー」ってなるよりは(笑)
GM/霧谷:「かもしれません」(笑)
白雪:でも複製体を作るんだったら別に久遠寺さんのデータでなくても……。
GM:複製体を作るのが問題なのではなく……。
遥歌:どこまで精度のいい複製体を作るのかで、それをUGNで研究してたのがここだから。
GM:それに「複製体とその発症するシンドロームの関係について」の研究成果も一度ゲットしてるから。
そういうセッションが昔あったらしい。
遥歌:わかりました。霧谷さんとしては回したほうがいいですか? 今はストップさせてるんですけど。
GM/霧谷:「正直、どちらにしても時間がないと思います。向こうはやるならば迅速に対応してくるはずですから、少なくとも1度武蔵蓮沼支部が危機に陥るのは間違いないです」
遥歌:なるほどね。んー……じゃあさっきのボタン電池の話をしよう!
だから電池じゃないってば。
遥歌:これが天羽君に埋められてしまっている場合、天羽君を救ったとしても、装置を発動されたら死んでしまうわけですよ。
GM/霧谷:「それに関しては大丈夫でしょう。あれは、その生物ができたときに埋め込まない限り、後から外付けすることは不可能です」
遥歌:じゃあ天羽君に埋められている可能性は低いということですね?
GM/霧谷:「低いですね」
GM:その後改良して外付けできるようになってたら知らないけどぉ〜(笑)
遥歌:それについてはあからさまにほっとした顔を見せよう。もし天羽君に埋められてて、目の前で天羽君が溶けちゃったらシュージ君になんていってあげたらいいんだろうって思ってて……。いなくなった人を返してあげるってシチュエーションに弱いんですよ、僕は!
GM:あー、なるほどね。なんとかして返してあげたいと。
遥歌:思うわけですよ! ここまで子犬がきゅうんきゅうん言ってたらさー。
シュージ:きゅ〜んきゅ〜ん。
遥歌:なので、できれば天羽君の安全を最優先で考えたいなと思ってたんですけど、わかりました。霧谷さんの方で掴んでらっしゃることはありますか?
GM/霧谷:「アイギス研究所の場所に関してはこちらでも掴めていません」
遥歌:そうですか……。わかりました。一旦協力してくれている人とも相談したいんですがよろしいですか?」
GM/霧谷:「それはかまいません。では連絡はこちらにお願いします」
遥歌:じゃあ叶歌につないで「本当にありがとうございました。助かりました」
シュージ/叶歌:「お役に立てたようでよかったですわ」
遥歌:では、ぱたんと携帯を閉じて。……というわけで。話の内容を皆に伝えます。で、天羽君の絡みについては刺激が強すぎるので、天羽君を助ける可能性という言い方はするけど、実験の素体にされてるとか、複製体が使われているとか、そのあたりは伏せる。シュージ君の前では、少なくとも。
白雪:あー、でもそこらへんは気づくだろうな。研究者だし、なんとなく。
GM:そうだね。研究者なら気づくけど、シュージ君は気づかないね(笑)
シュージ:うにゃー? こきゅー?
遥歌:で、どちらかの方法ということで提示をされたんですが。
瑠璃:……もうひとつ。
GM:ん? 何か可能性がもうひとつあれば。
瑠璃:武蔵蓮沼をこれから襲いに行くとか(笑)
GM:襲撃しに行くの、先に!?(笑)
瑠璃:要は、襲撃されたって事実が広範に伝わればいいんでしょ?
GM:ああ、なるほどね。
瑠璃:私らが陽動で行ってなんでもいいから騒ぎ起こしちゃえばいいんでしょ?
シュージ:「たぁーっ」て行って「うわー、やられたー」って?
瑠璃:失敗して武蔵蓮沼がそれなりに手ごわいって事が伝われば向こうの動きもけん制できるわけだから。
白雪:え、でもそれって……。
遥歌:逆に疲労してるから来るかもね。
瑠璃:まぁね。
白雪:てか、一回来たのを防衛したら云々は、一回防衛して、新進派がやったっていうことを掴んでうりうり、じゃないんですか?
GM:ま、そういうことだね。実際は。
白雪:それなら私たちが襲っても意味ないですよ。
GM:面白い(笑)仮面かぶって『ふぁるすはーつ』とか書いてあったり(一同爆笑)
一同:馬鹿だーっ(笑)
瑠璃:「我々はー、甲月シュージの身柄を要求しているー」(笑)
GM:それでUGN上層部には「すいません、FHにもっていかれました!」(笑)
一同:頭わるーい(笑)
GM:そのあとどーすんだ(笑)
シュージ:わけわかんないよぉ〜(笑)
瑠璃:じゃあ……電撃戦はそもそも場所掴めてないからどうしようもないでしょ?
GM/付渡:「いや、それについてはこいつを春鮫に《サイコメトリー》してもらえばあるいは」
瑠璃:ああ、そういうことね。
白雪:というか、私たちごときが加わったところで戦況に対して差がないような……。
瑠璃:あのさぁ。武蔵蓮沼の戦力ってどのくらいか知ってる?
白雪:え、低いんですか?
瑠璃:うん(きっぱり)
微妙な沈黙。
シュージ・瑠璃:こいのぼり直属の精鋭部隊だよ! 低いに決まってるじゃん!!(笑)
富士見書房から発売されているリプレイ『闇に降る雪』『聖夜に鳴る鐘』参照。
GM:皆で防衛しなきゃだめだよ? しかもシュージ君を防衛できるのはある意味ここだけなんだよ。
遥歌:従者をシュージ君の形に作っとくとか。
GM:皆で?(笑)
ブラム=ストーカー祭りですが、残念ながら《血の従者》が使えるのは2人だけです。
瑠璃:いいじゃん、電撃戦行こうよ。武蔵蓮沼支部に遥歌君が作っとけばいいんでしょ? シュージ君の……。
遥歌:ああ、なるほどね。
瑠璃:複製体。
一同:複製体っ!?
遥歌:あ、こんなこともあろうかと……(何かを前に押し出す仕草)
GM:コラ(笑)
白雪:えぇっ!?(笑)
シュージ:ひどいやぁ(笑)
瑠璃・遥歌:まぁそれは冗談として。
白雪:じゃあまず……春鮫さん?
瑠璃:NPCよりPCを助けようよ。
シュージ:(そわそわ)たーすーけーる、たーすーけーる。
方針は決まった。遥歌は霧谷に報告を済ませ、同時に付渡が“春鮫”に連絡をつける。ほどなくして現れたのは、一人の傭兵の男だった。
白雪:申し訳ないのですがさっそくこれをお願いします。
GM/春鮫:「ああ。これを《サイコメトリー》で調べればいいんだな」
GM:そうやって読み取った結果、武蔵蓮沼からちょいと離れた場所にアイギスの研究施設があることがわかりました。ある程度の見取り図も分かります。
GM/春鮫:「こんなもんでいいか?」
遥歌・白雪:ありがとうございます。
シュージ:ありがとー。
瑠璃:さて、じゃあ車を呼んで移動しますか。
GM:春鮫はついてこない。「俺の仕事はここまでだな」と言って帰ります。
シュージ:ありがとー。
白雪:いつかお礼は必ず。
GM/春鮫:「いや。……付渡、あとで振込みな」
GM/付渡:「ああ……」(一同笑)
GM:では車に乗り込んだ面子は付渡、真琴君にPC4人。
遥歌:僕はその間にできるだけシュージ君を変装させておきたいんですが、何で判定すればいいですか?
GM:<隠密>ですね。
白雪:それなら私がやったほうがましです。
遥歌:そこ(瑠璃)が一番【感覚】が高いですね。
瑠璃:(無言で侵蝕値を上昇させる)
遥歌:天性でひらめけ?
GM:そんなに激しく変装。
シュージ:で、どんなかっこさせられたの?
白雪:絵里香さんの格好。
シュージ:えー。
白雪:あ、絵里香さんの格好(シスター服)だと動きにくいか。
そういう問題ではない。
GM:天羽君の格好とか。
瑠璃:それもっと狙われそうだから(笑)
遥歌:武蔵蓮沼高校の制服着せるとか。
瑠璃:それも微妙かなぁ。普通の町の人でいいよ。
GM:じゃあシュージ君に見えないように変装させ、君達はアイギス研究所へと向かった。
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