「こんにちはー」

 今日も元気な挨拶をして入ってくるのは、千晶さん。

 あれから長い年月が経ちました。
 ここもこの前の戦争の後と、十年ほど前と建て替えられ、今は五階建てのビルになりました。
 その中の一部は学習塾やカルチャースクールという学校のようなものになっています。
 もうすぐ塾が始まる時間です。みんなが次々やってきます。

 「こんにちはー」
 「あやちゃーん、塾が終わったら遊ぼうねー」

 受付の椅子に座ってみんなを待っていた私は、「はい」とこたえます。
 時代は変わりましたが、佐和さんがいた場所は今も子どもたちが集まってきます。
 みんな、いつかは私と遊んでいたことを忘れていってしまうのですけれども。

 「あやちゃん、今日のおやつ、何がいいかしら?」

 事務室から、春海さんが聞いてきます。
 春海さんはまだ18歳ですが、ここの塾長さんです。

 「あやは何でもかまいません。みなさんに合わせます」
 「うーん。功裕さんは食べなくていいっていうから、困ってて‥‥」

 功裕さんは、ここで働いている事務員さんです。

 「それなら、あやは羊羹がいいです。京さんたちにも聞いてみて下さい」
 「わかったわ」

 私はここが大好きです。
 だって新しいお友達にも出会えますし、それに‥‥。

 「京ちゃん、紫音君、おやつ羊羹でもいいかしらー?」

 私のことを忘れない、仲間にも出会えましたから。

 「あやもお買い物、一緒に行きます」
 「じゃあ、紫音君と京ちゃんと一緒に行ってきてくれる?今電話が入ってしまって」

 私たちのことを、人は「妖怪」と呼んでいるようです。

 「はい。行ってきます」

 あの頃と同じように、私はみんなと仲良く過ごしています。
 これからもずっとここにいられたら、私は幸せです。

 おわり





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