ピール紹介自治組合 |
舞台はルナル世界、グラタス半島にある魔術都市ピール。
古代遺跡をほぼそのまま利用しているこの都市は、存在そのものが大きな謎である上に、そこに住む魔術研究者……魔術師(ウィザード),学術の神ペローマに従う者、そして、邪術師(ソーサラー)……彼らの存在によって一般人には立ち入る事がはばかられる一種異様な空間が形成されていた。
もしも、この街に有用な資源が無かったら……つまり、経済的に興味を引くものが無かったのなら、おそらくここは人々の話題に上る事も無く、孤高を保っていたであろう。都市の住民は研究の対象物にしか興味は無く、世俗とは全く没交渉だったのだから。
しかし、この都市には世の人々が求めるもの――最先端の魔法技術が存在していた。
都市の住人にしてみれば、研究の結果が日々の糧になるのは歓迎すべき事だが、なるべくならば貴重な研究の時間は削りたくない。都市の外から見れば、中に踏み込む事は恐ろしいが、魔法の製品は欲しい。
そんな両者の思惑が重なってできた組織が、『ピール紹介自治組合』である。簡単に言ってしまえばピールの内外で使い走りをするだけの団体であったものが、常にトラブルの絶えないピールという都市の内部での作業を通じて揃えられた精鋭達によって『最強の便利屋集団』の二つ名を得るまでになったのである。
その名が示す通り、この組合の仕事は都市内外の紹介所の役割を大きく越え、都市内のトラブルの解決も請負っている。依頼さえあれば、それこそ迷子の捜索からソーサラーの討伐まで何でもやる……という建前である。
もちろん、やってできない事などこの世にごまんとある訳で、そこいらへんは、ご愛嬌……と言っておこう。
この物語は、そんな『組合』に所属する、もしかしたら英雄と呼ばれる事になるかもしれない者達の、トラブルに満ち満ちた日常のお話である――――